2026年5月 愛知県蒲郡市・竹島
その日は、よく晴れていました。
海の向こうに浮かぶ、小さな緑の島。
愛知県蒲郡市の竹島へ渡る橋は、長さ387メートルあります。
平日の橋には人影もまばらで、潮風だけが絶えず海の上を渡っていました。
この日は、宿命詠みをお預かりしていた、ある方の代理参拝でもありました。
その方からお預かりした商いの願いを、神前へお届けするために。
ご本人に代わって願いを携え、
私は竹島へ渡りました。
島全体が、神域となる場所
竹島は、本土とは異なる植物が育つことから、島全体が国の天然記念物に指定されています。
その中心に鎮座する八百富神社の御祭神は、市杵島姫命。竹島弁財天とも呼ばれ、縁結び、諸芸上達、安産、開運厄除、商売繁盛の御神徳で信仰を集めています。
島には八百富神社のほか、大黒神社、宇賀神社、千歳神社、八大龍神社が祀られています。

竹島についての情報は、八百富神社公式サイトと蒲郡市観光協会を参照しています。
鳥居の先に待っていた、
急な石段
橋を渡り、鳥居をくぐると、目の前に石段が現れます。
ものすごく長いわけではありません。けれど、見上げると思った以上に角度がありました。

一段ずつ登る途中、足が小さく震え始めました。
それでも息を整え、足元を確かめながら、立ち止まらずに登りました。
人の氣を詠み続けていても、自分自身の今を身体から教えられることがあります。
言葉では隠せても、
身体と氣には、歩んできた跡が表れます。
お預かりした願いを、
大黒神社へ
石段を登った先で大黒神社へ進み、宿命詠みをお預かりしている、その方のお名前を胸に手を合わせました。
大黒神社に祀られる大国主神は、国土を拓き、人々へ農耕や医薬の道を授けたと伝わる神様です。大黒天とも習合し、福の神として広く信仰されています。
お預かりしていたのは、商いに関わる願いでした。
その方が本来持つ力を発揮し、必要とする方へその力が届き、正しい巡りが生まれていくように。
その方の商いが、
人を照らし、ご自身の豊かさへも
結ばれていきますように。
代理参拝とは、願いを代わりに叶えることではありません。
遠く離れた方の願いをお預かりし、神前へ運び、その方が現実で踏み出す一歩を祈りで支えることです。
いただいたご縁を胸に、
願いが正しい巡りへつながるよう、
静かに手を合わせました。
「末吉」が伝えてくれたこと
参拝を終えたあと、おみくじを一枚引きました。

結果は、末吉。
けれど、そこに書かれていた「花散り実を結ぶが如し」という言葉は、その時の私にとって大吉よりも必要なものでした。
初めに困難があっても、やがて成就へ向かう。
ただし、油断せず、心を正して進むこと。
力を持つほど、自らを戒めなければならない。
祖母から何度も教えられた言葉が、胸の中へ戻ってきました。
人の恐れにつけ込み、答えを小出しにして、自分から離れられなくすることもできてしまう。
だからこそ、宿命師は、自分のために人の不安を使ってはなりません。
私が渡したいのは、依存するための答えではなく、
ご自身の力へ戻るための言葉です。
おみくじを畳みながら、その誓いをもう一度、胸の中心へ置きました。
整いすぎていない道を、歩く
参拝のあとは、島の外周を歩きました。
一周は、およそ680メートル。

海のすぐそばを通る細い道には、岩の凹凸が残り、場所によっては太い枝が行く手を横切っています。

少しかがみ、足元を確かめなければ進めません。
歩きやすさだけを求めれば、枝を切り、道を平らにすることもできたでしょう。
けれど、すべてを取り除かなかったからこそ、竹島の自然はその姿のまま息づいていました。
道は、いつも真っ直ぐで、
歩きやすいとは限りません。
時には立ち止まり、身を低くし、今までとは違う姿勢で通り抜ける場所もあります。
宿命を知ることも、過去をすべて切り捨てることではありません。
これまで自分を守ってきたものを見つめ、これからの歩みには合わなくなった選び方だけを変えていく。
竹島の道は、そのことを形にして見せてくれているようでした。
祈ることは、
歩くことをやめることではない

祈ることは、神がかりな力へ未来を預け、歩くことをやめることではありません。
祈りの中で、ご自身が本当に願っていることへ戻り、その願いに沿う一歩を現実で選ぶこと。
未来を変える力は、
遠くにいる誰かではなく、
ご自身の内側にあります。
宿命師ができるのは、その力がどこで使えなくなっているのかを詠み、もう一度手に取るための言葉を渡すことです。
竹島の潮風の中で、私は、縁を結んでくださる方々へその言葉を渡し続けることを誓いました。
黄龍院レイ
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